【社労士が解説】人工関節で障害年金をもらえる人とは?永久認定の条件についても解説
人工関節とは?
変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより関節が変形・損傷した場合に、関節の機能を回復させる目的で行う手術が「人工関節置換術」です。
この手術によって関節の痛みを和らげ、可動域や日常動作を改善することができます。
人工関節の手術を受けた方の中には、「障害年金を受け取れるのか?」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
実は、人工関節も障害年金の対象傷病の一つです。
障害年金とは?
障害年金とは、公的年金制度の一つで、病気やけがによって日常生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取れる年金です。
「障害者手帳を持っていないと申請できない」「労災でなければ対象外」と思われがちですが、実際には老齢年金と同じ公的制度の一部です。
障害年金の受給要件を満たしているにもかかわらず申請していないのは、65歳を過ぎても老齢年金を受け取っていないのと同じようなものです。
特別な事情がない限り、受給を検討されることをおすすめします。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るためには、次の条件を満たしている必要があります。
申請前に必ず確認しましょう。
初診日要件
国民年金・厚生年金・共済年金のいずれかに加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガで医師または歯科医師の診察を受けている必要があります。
この診察を初めて受けた日を「初診日」と呼びます。
健康診断で異常が見つかった日や誤診を受けた日が初診日とみなされる場合もありますので注意が必要です。
保険料納付要件
この要件を満たしていないと、将来にわたって障害年金は受け取れません。
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間のうち、3分の2以上が次のいずれかに該当している必要があります。
- 保険料を納めていた期間(会社員や公務員の配偶者期間を含む)
- 保険料が正式に免除されていた期間(全部・一部免除)
- 保険料納付猶予期間(学生納付猶予など)
- 合算対象期間(いわゆるカラ期間)
令和8年3月31日までに初診日がある場合は、特例として「直近1年間に未納がなければOK」となります。
※20歳前の初診の場合は納付要件は不要です。
障害認定日の要件
障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日、または症状が固定して治療効果が期待できないと判断された日を指します。
この日に障害状態が一定以上であれば、翌月から障害年金が支給されます。
特例として認定される主なケース
- 人工関節・人工骨頭を挿入・置換した日
- 人工肛門造設から6か月経過した日
- 人工透析開始から3か月経過した日
- ペースメーカー・人工弁などを装着した日 など
この時点で障害状態に該当していれば「障害認定日請求」として申請可能です。
認定日請求が遅れても、最大5年まで遡って受給できます。
なお、認定日当時は軽症でも、後に悪化した場合は「事後重症請求」という形で申請できます。
受給できる年齢の目安
原則として、20歳から64歳までの方が対象です。
65歳以上は老齢年金との選択・併給調整が発生するため注意しましょう。
人工関節の認定基準(等級の目安)
人工関節・人工骨頭の置換術を受けた場合、原則として障害等級3級に該当します。
ただし、以下のように障害の程度によって上位等級が認められることもあります。
「一下肢の用を全く廃したもの」とは
一下肢の3大関節中(股関節、膝関節、足関節)いずれか2関節以上の関節が、通常の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減している場合。
「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」とは
両下肢の3大関節中(股関節、膝関節、足関節)いずれか1関節以上の関節が、通常の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減している場合
(日本年金機構の障害認定基準より引用)
永久認定の可能性と条件
人工関節を挿入・置換した方の中には、「永久認定(えいきゅうにんてい)」 の対象となる場合があります。
永久認定とは、障害の状態が今後も変わらないと見込まれる場合に、定期的な再認定(更新)が不要になる仕組みのことです。
障害年金は通常、1年~5年ごとに「更新手続き(再認定)」が必要ですが、永久認定を受けるとこの手続きが不要になります。
これは、人工関節のように回復や改善の見込みが少ない障害に対して認められることがあります。
<メリット>
- 更新手続き(診断書の提出)が不要になる
- 更新忘れによる支給停止のリスクがなくなる
- 将来的な安心感が得られる
<デメリット>
- 一度認定されると等級変更が難しい(状態悪化時に見直しがされにくい)
- 状況によっては、医師の判断や社会的回復の有無で永久認定が見送られることもある
人工関節の場合、「手術後に状態が安定し、今後大きな改善・悪化が見込まれない」と判断された場合に、永久認定の対象になる可能性があります。
永久認定を受けるための条件
人工関節で障害年金の永久認定を受けるためには、次のような条件を満たしている必要があります。
- 人工関節が長期間にわたり安定しており、再手術や再置換の予定がないこと
- 障害状態が固定しており、日常生活における機能障害が継続していること
- 医師が「症状固定」と判断していること(診断書に記載される)
- 再審査請求や状態確認の必要性が低いと認められること
永久認定は、すべての人工関節手術に自動的に適用されるわけではありません。
多くの場合、2回目の更新(再認定)時点で、障害の状態が安定していると判断されてから認定されるケースが多いです。
なお、永久認定を受けるかどうかは年金機構や審査医の判断によって異なるため、診断書作成時には医師に「将来的に永久認定が可能かどうか」を確認しておくと安心です。
ポイント:人工関節でも永久認定を意識した申請を
人工関節による障害年金申請の際は、単に「受給できるか」だけでなく、将来的に永久認定を受けられる可能性を見据えて申請準備をすることが重要です。
診断書の記載内容や症状固定の時期によって、後の扱いが大きく変わります。
当事務所では、人工関節に関する障害年金の永久認定の可能性についても丁寧にアドバイスしています。
将来的な再認定負担を減らしたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
障害年金の受給額の目安
先ほども申し上げた通り、人工関節では原則障害厚生年金3級として認定されます。
最低保証額(定額部分)は以下のとおりです。
令和7年4月時点の最低保証額:
月額 約52,000円(年間623,800円)
報酬比例の年金額:
加入期間や給与額に応じて異なる(加入期間が短い場合は最低保証額が適用
計算方法
障害年金3級の年金額は、「報酬比例の年金額」と「最低保証額」のうち高い方が支給されます。
計算式:
報酬比例の年金額 = (平均標準報酬額 × 7.125/1000 × 厚生年金加入月数)
※ 25年(300月)未満の場合は、300月とみなして計算
人工関節で障害年金を受け取るための3つのポイント
診断書に日常生活の実態が反映されているか
障害年金の可否は、診断書の内容で9割が決まるといわれます。
医師は通院時の状態を基に診断書を書くため、普段の生活での不自由さが反映されにくいのが実情です。
書いてもらう際は、実際の生活状況(歩行・階段・着替えなど)をしっかり伝えましょう。
初診日を正確に確認する
初診日は非常に重要な要素です。
誤った初診日で申請すると、受給できないケースもあります。
医療機関のカルテや紹介状などをもとに、正確に把握しておきましょう。
働いていても受給できる場合がある
「働いているから年金は無理では?」と不安に思われる方も多いですが、働いていても支給対象になることがあります。
障害者雇用枠や軽作業中心で勤務しているなど、職場から特別な配慮を受けている場合は、3級認定が可能です。
(※障害年金3級は厚生年金加入者が対象です。)
ただし、20歳前の傷病による障害基礎年金は、所得に応じて減額・支給停止となる場合があります。
無料相談受付中
障害年金は、不運にも障害を負ってしまった方を支える大切な制度です。
しかし制度や手続きが複雑で、「申請までに半年以上かかる」「書類の不備で不支給になった」などのご相談も多く寄せられます。
当事務所では、人工関節をはじめとした障害年金の無料相談を行っています。
お電話・面談・オンラインのいずれでもご対応可能です。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
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