脳梗塞で障害年金は貰える?障害年金のポイントについて社会保険労務士が解説!
脳梗塞(脳血管疾患)とは?
脳梗塞は、脳の一部への血流が遮断されることで発症し、影響を受けた部位に応じた症状が突然現れます。代表的な症状には、以下のようなものがあります。
片側の麻痺やしびれ: 顔、腕、脚のいずれか一方に、急激な筋力低下や感覚の異常が生じる。
言語障害: 話すことや言葉を理解する能力に支障が出る(失語症)。
視覚障害: 片側または両側で視野が狭くなったり、視力が低下する。
バランス障害やめまい: ふらつきや歩行困難、転倒の危険性が高まる。
突然の激しい頭痛: 特に原因がはっきりしない激しい頭痛が伴う場合もある。
これらの症状は急速に進行するため、発症後は速やかな医療機関での対応が求められます。
脳梗塞の発症は、複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされます。主な原因としては、以下の点が挙げられます。
動脈硬化と血栓: 加齢や高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスク要因によって、血管内にプラークが形成され、動脈硬化が進行します。これにより、血管が狭窄または閉塞し、血流が遮断されやすくなります。
心原性塞栓: 心臓から生じた血栓(例:心房細動に伴う血栓)が血流に乗って脳の血管を詰まらせることも、脳梗塞の原因となります。
生活習慣や環境要因: 喫煙、過度のアルコール摂取、運動不足、偏った食生活などの不健康な生活習慣が、動脈硬化の進行や血栓形成のリスクを高めます。また、慢性的なストレスなども、血圧の上昇や血管収縮を促し、脳梗塞のエピソードの引き金となる可能性があります。
障害年金とは
「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害者のための特別な手当や、事故や労災などによるケガでないと申請できない、と勘違いされている人もいますが、実は老齢年金と同じ公的年金です。
もちろん脳梗塞(脳血管疾患)も障害年金の対象傷病です。
障害年金の受給要件を満たしているのに、障害年金を申請しないというのは、65歳になっても老齢年金を受け取っていないようなものなので、特別な事情のない限りは障害年金の受給をお勧めします。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
申請の前に、条件を満たしているか必ず確認しましょう。
①初診日要件
国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガを医師や歯科医師に診察してもらっていることが必要です。
この診察を初めて受けた日を「初診日」といいます。健康診断で異常がみつかった日や、誤診を受けた日が初診日とみなされることもありますのでご注意ください。
②保険料納付要件
この保険料納付要件が満たされないと、一生この病気やケガを原因とする障害年金はもらえません。
初診日の前日に、その初診日のある月の前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
保険料を免除されていた期間(全部免除、一部免除)
保険料納付猶予期間(学生納付猶予など)
合算対象期間(いわゆるカラ期間)
20歳以降初診日の前々月までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料が未納でなければ大丈夫です。
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、納めていたものとして扱われます。
上記の要件には当てはまらなくても、令和8年3月31日までに初診日がある場合は、初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の未納がなければ要件を満たすことができます。
(※20歳前の年金制度に加入していない期間に「初診日」がある場合は、納付要件は不要です)
③障害認定日の要件
障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。
障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日か、1年6か月が経過する前に症状が固定し、それ以上治療の効果が期待できない状態となった日のことです。
例外
下記の状態になった場合も障害認定日として扱われます。
・咽頭全摘出・・・摘出した日
・在宅酸素療法・・・常時使用を開始した日
・人工透析をしている場合・・・人工透析開始から3ヶ月を経過した日
・心臓ペースメーカー、人工弁、CRT、心臓移植、人工心臓を装着(移植)した場合・・・装着(移植)した日
・人工肛門造設、尿路変更術・・・造設日(手術日)から起算して6か月経過した日
・新膀胱・・・造設した日
・遷延性植物状態・・状態に至った日から3か月を経過した日
・人工骨頭、人工関節を挿入置換した場合・・・挿入置換した日
・手足の切断の場合・・・切断された日
・脳梗塞、脳出血による肢体障害の場合・・・初診日から6ヶ月以上経過後の医師が症状固定と判断した日
この障害認定日に一定の障害状態にあると認められると、その翌月から年金が支給されます。
これを、障害認定日請求と呼び、もし請求が遅れても最大5年遡って支給されます。
そのほか、障害認定日に障害の状態が軽かったとしても、のちに悪化する場合もあります。
この時は「事後重症請求」という形で申請することも可能です。
④受給できるのは原則20歳から64歳まで
障害年金は原則20歳から64歳までの人が受給できます。
65歳以上は老齢年金と障害年金のどちらかを選択するか、または併給調整がかかり、最終的にもらえる金額が変わらない場合があるため注意が必要です。
65歳以上の方はこちら
脳梗塞(脳血管疾患)の認定基準
障害年金を受け取るためにはそれぞれの傷病の「認定基準」を超えていることが重要となります。
脳梗塞は多様な障害を引き起こす可能性があり、各認定基準は以下の通りです。
脳に関する障害は様々な障がいを引き起こします。そのため、傷病名だけでなく、どのような症状が出ているかについても把握する必要が有ります。
肢体(手足)の障害の認定基準
脳梗塞などで手足に麻痺やしびれが残ってしまった場合には「肢体の障害」に該当します。
肢体の障害の認定基準のイメージは以下の通りです。
(※例として、上肢の認定基準のみを掲載しています。)
そしゃく・言語・嚥下能力に関する障害の認定基準
脳梗塞や脳出血によって、脳にある言語野という部位にダメージを受けると、のどの筋肉に麻痺が発症する場合があります。
この場合、障害等級の判定には「そしゃく・嚥下機能の障害 」の障害認定基準が適用されます。
また、脳にある言語野という部位が傷ついてしまうと言語障害が生じることがあります。
脳の障害による言語障害には以下のものが含まれます。
構音障害又は音声障害:発音に関わる機能に障害が生じた状態
失語症:大脳の言語野の後天性脳損傷(脳梗塞や脳出血)により、獲得された言語機能に障害が生じた状態
この場合「音声又は言語機能の障害 」の障害認定基準が適用されます。
高次脳機能障害の認定基準
高次脳機能障害とは脳梗塞や脳出血によって脳がダメージを受けたことにより、注意力・記憶力・言語・感情の制御などがうまく働かなくなる障害を指します。
認定基準のイメージは以下の通りです。
また、この障害の状態にあるのは初診日から1年6か月経過した日(認定日)であることが必要です
脳梗塞(脳血管疾患)で障害年金を受け取るためのポイント
診断書に日常生活が適切に反映されているか確認しましょう
障害年金の申請には診断書が非常に重要となってきます。
障害年金を受給できるか、できないかの9割が診断書で決まるといっても過言ではありません。ですが、医師は病院で受診をした際の状況で症状の状態を判断しているため、普段の生活状況を加味して診断書を書くことが非常に困難です。
診断書を書いてもらう際にはご自身の普段の生活状況など、医師から見えない範囲の生活状況も適切に反映されているかを確認しましょう。
初診日がいつかを確認しましょう
初診日の確認は障害年金の申請上、細心の注意が必要な作業です。
初診日がいつかによって障害年金を受け取れなくなってしまったり、逆に受け取れるようになる場合もあるため、初診日は正確に把握するようにしましょう。
働いていても障害年金は受給できます。
「働いていると障害年金は申請できないですか?」といった質問や、既に受給している方からは「働いたら年金は支給停止になりますか?」といった疑問はよく耳にします。
ですが、障害年金を受け取るに当たって、「働いている」という事実だけで、不支給となることはありません。
不支給や支給停止になるケースはいずれも、実際の就労状況に左右されます。
障害者雇用枠で働いていたり、軽作業のみを任せてもらっているなど、職場から特別の配慮を受けている、フルタイムや週5日勤務が難しいといった状況にあれば、働いていても障害年金3級を受け取れる可能性があります。
(※障害年金3級は厚生年金の加入者のみ対象です。)
なお20歳前傷病による障害基礎年金を受給している場合は、所得の金額により減額または支給停止になることもあるのでご注意ください。
無料相談受付中
いかがでしたでしょうか。
障害年金は不運にも、障害をおってしまった方を経済的に支える非常に重要な制度です。
しかしながら、その制度や申請手続きはとても複雑で、申請までに半年や1年もかかってしまったり、申請自体をあきらめてしまうことも少なくありません。
そんな時は、当事務所の無料相談をご活用ください。
電話や実際にお会いして障害年金に関するご相談をお受けいたします。
また、ご自身での申請が難しい場合には、障害年金の申請代行サポートもございますので、お気軽にご相談ください。